2012年11月28日

浅田真央、“ジャンプミス”連発でも優勝の真相 技術と演技に見た新たな可能性

野口美恵
スポーツナビ浅田真央、“ジャンプミス”連発でも優勝の真相
技術と演技に見た新たな可能性
2012年11月27日(火)

■浅田真央のターニングポイントの試合
キス&クライで肩を落として点数を見守る浅田真央。グランプリ(GP)シリーズ6戦目のNHK杯、フリースケーティングは、ジャンプ7つのうち4つでミスをし、散々の内容だった。
「自分の演技の出来の悪さにがっくりしていて、得点も順位もまったく考えていませんでした」

 鈴木明子は、フリーで次々とジャンプを決めて勢いのある演技を披露し、観客はスタンディングオベーション。その残像が残るなか、浅田がミスを連発したことで、多くの観客が鈴木の優勝を予想していた。むしろ浅田が2位にとどまることができるのか、不安に思った人もいただろう。

 すると、浅田のフリーの得点は117.32点で2位、総合では鈴木を0.05点差でかわし、185.27点で優勝した。会場はざわついた。浅田も言う。
「優勝と出て、ちょっとポカーンとしました」
 これは不正採点や採点ミスという類のものではない。今季の浅田が「ジャンプに頼らずに高得点を狙えるタイプ」へとシフトしたことを証明する、ターニングポイントの試合だったのだ。

■ミスしたジャンプへの加点は「実行されたジャンプを評価」
 ではなぜジャンプで4つもミスをした演技が、117.32点という高得点だったのか。これは採点方法と照らし合わせると、減点が最小限にとどめられた理由が分かる。それは(1)ミスしたジャンプで加点された(2)ミスしても演技が途切れなかった――という2点だ。

 まず今回の浅田は、3回転ループや3回転フリップを予定していたものが、2回転になってしまった。多くのケースでは、コントロールを失って軸がブレてしまい2回転になるので、明確なミスとして「出来ばえ(GOE)」は減点される。しかし、今回の浅田は、2回転ループで「+0.26」、2回転フリップで「+0.09」の加点をもらった。
 この理由を、元国際スケート連盟(ISU)ジャッジの杉田秀男氏はこう説明する。
「そもそも、ジャッジが『これは3回転をやる予定だ』と思い込んで見て2回転だったから減点という採点方法ではない。あくまでも実行されたジャンプそのものを評価する。そうなると、2回転であっても軸がブレずにコントロールされていれば、プラス評価することはあり得る」

 確かに、「真央なら3回転するはずだ」と思い込んで見るのは、ジャッジとしては偏った視点だ。ジャッジの「ジャンプの減点ガイドライン」には、踏み切りや着氷については細かく減点が記されているが、「3回転の予定が2回転になったから減点」という文言は、当然存在しない。
 結果として浅田は、ミスした4つのジャンプのうち2つをクリーンに降りたことで、「出来ばえ」に加点をもらった。

■佐藤コーチ理想のスケートへ、真央「手応えを感じている」
次に「ミスしても演技が途切れなかった」ことが高得点につながった。一般的には、ジャンプで転倒があると、予定していた細かなステップをタイムロスのために省いたり、せっかく醸し出していた世界観が途切れて我に返ってしまったりする。そのため「ジャンプ転倒=演技力の点数に影響」ということは、採点方法に明記はされていないものの、ジャッジセミナーでは指導されている。

 しかし今回の浅田は、転倒や着氷のミスは一切なかった。むしろジャンプ全体のスピードは昨季よりもあり、着氷後もスーっと後ろに流れていくような質の高いものだった。そのため、ジャンプミスによって演技構成点が下がる、という図式にはあてはまらなかったのだ。

 佐藤信夫コーチは言う。
「とにかくスピードをつけて、大きく立派なジャンプを跳ばせようと思っています。だんだんスピードが出てくると、今度はちょっとした狂いが(空中での)ブレになる。スピードを出した中でのジャンプは、良かったり悪かったりです」
 今はスピードのあるジャンプへと磨き上げている過渡期。ジャンプの成功はならなかったが、スピードを出して質を高めようとしたという面を評価し、佐藤コーチは納得の表情でうなずいた。

 ジャンプミスによる演技構成点への影響が少ないとなれば、あとは披露した演技そのものへの評価が勝負になる。そして浅田は、気持ちが途切れることなく最後まで集中し、練習通りの滑りを見せた。今季のフリーは、言わずと知れたバレエの名曲「白鳥の湖」。黒鳥の32回転のグラン・フェッテの場面では、グラン・フェッテを連想させる高速ツイズル(回転)の連続で、曲想を見事に表現するなど、見どころの多い演技内容だった。
「スケートを基礎からやり直した成果です。演技では、1つ1つ音を外さないように徹底してきたので、それが評価されたと思います」と佐藤コーチ。浅田も「フリーはしっかり練習してきてプログラム全体が体に染みついている。練習ではすごく良い状態になっていました。あれ(失敗)だけでなく、滑り全体を見ての評価なんだと思います」と話し、演技全体を踊りきるという面では、かなり完成度が高い状態まで来ているという。
 結果として、「スケート技術」「演技力」「音楽表現」の3項目で、8点台という高評価を得て、演技構成点の64.54点は全選手でトップの評価だった。浅田は振り返る。
「信夫先生の所に行ってから、スケーティングから直したし、ジャンプも新しいフォームからの指導だったので苦労しました。でもちょっとずつ良くなっている。今ようやく、滑りにもジャンプにも手応えを感じているんです。練習の方向性は合っている、そう思います」

 その手応えは、ジャンプだけに頼らずに高得点を狙える、佐藤コーチが目指す理想のスケートに他ならない。

■鈴木明子、素晴らしい演技で観客を魅了

0.05点差での2位だったが観客への印象は優勝に値した鈴木明子【坂本清】 ひとつ付け足すとすれば、鈴木の演技も素晴らしかった。鈴木自身が曲を選んだという、シルク・ド・ソレイユの「オー」は、伸びやかさとスピード感が溢れる滑りだった。観客には「ノーミス」に見えたほどの演技だが、「ルッツのエッジが不明確」が2つと、「ループの回転不足(アンダーローテーション)」により、3点以上失っている。0.05点差での2位ということを考えれば、観客への印象としては、優勝に十分値する演技だった。

 フィギュアスケートは、非常に細かい採点基準により評価される。ち密な戦略、高い技術と、感動を与える演技――さまざまな要素が絡み合いながらも、しかし最後に言い渡されるのは、順位というたった1つの数字だ。
 だからこそ。順位を見て、あれこれ論議するよりも大切なことがある。3年かけてスランプを抜けようと努力している浅田と、歳月をかけて徐々に進化してきた鈴木。その両者に、同じだけ大きな拍手を送ることだ。


頑張れ!
日本のスケーターたち!!
posted by ぶるうらぐん at 23:44| Comment(2) | フィギュアスケート(浅田真央) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
残すところ,年内はもう,ファイナルと全日本のみですね!わたしはお茶の間から精一杯応援したいと思います!!

来年,四大陸のチケットが取れました。女子のフリーとペアの日です。ぜひ,浅田選手の初生試合観戦となって欲しいです!!!

娘のコンクールは,予選は通過したものの残念ながら入賞はできませんでした。でも,全く緊張することなく,笑顔でのびやかに踊れました。5月の発表会と同じ踊りだったのですが,先生のご指導のおかげで,ぐ〜んと成長を感じることができました。また人と比べることによって足りないものが明確になったので,これからそこを磨いて,次回はぜひ入賞狙いたいです!!目標は高過ぎるくらいでちょうどいい。すべてはよりよい踊りのために。。。
Posted by Keiko at 2012年12月01日 17:48
Keikoさん、こんばんは(^^)

>残すところ,年内はもう,ファイナルと全日本のみですね!

そうですね!今度のファイナルは男子4人が日本選手ということで、嬉しい気もしますが、他国選手に「しっかり!!」とエールを送りたいような。。。そんな気持ちもちょびっと。。。
選手の必死な思いをくめば、そんな事言えないのですが、やはり数か国の選手が競い合う試合が観たいというのが本音かな?(ごめんなさい)

それにしても、よくチケット取れましたね!!
今回は日本で開催なんですよね!
私もそれを知った時は「なにっ!」と思ったんですけどね。

お嬢さん、頑張られたんですね!!
予選通過だなんて凄いじゃないですか!!
きっと「今度こそ」って、やってくれますよ(^^)
頑張ってくださいね!!

Posted by ぶるうらぐうん at 2012年12月02日 22:52
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